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★保護シートをラミしながらスリット加工も
MSRは、既に2年前から2,500mm幅対応のスリット機を自社で一から設計し、自社ブランドとしてスリッターを製造し、急成長を遂げる液晶テレビの第9世代向け
関連材料の加工にも対応できるように、作業環境のクリーン度をクラス1,000にまで高めている。この数年間、さまざまな材料を扱う中で、増加傾向にあるのが高機能性材料だ。こうした材料の搬入から
搬出までの品質管理体制について、高機能性材料の加工を受け持つ本社第2工場の柏原一之工場長(写真下)に伺った。
まずはスリットする加工材料の変遷だが、柏原工場長によると、「数年前までは、電材関連でも、メインとなる製品の周辺部材などが多かったのですが、最近は電子材料そのものの部品になる高機能性材料の加工が増えてきました」。では、高機能性材料の加工にあたっての取扱いポイントは何かと言うと、「電子材料系の機能性材料は、表面などに薄膜コーティングなどの精密加工されたものがありますが、それらをスリット加工ラインに載せるには、保護フィルムが付いているかどうかが1つのポイントとなります。フィルムの表面は、ラインに載せる場合に、当然ローラーと接触しますので、ロールとの相性をあらかじめ把握しておかないとフィルム表面に欠陥を作ってしまうことも可能性的にはゼロとは言い切れません。また、保護フィルムが付いているかどうかによってパスラインも変わってきます」(柏原工場長)。もし、保護シートが貼られていない場合でも、「当社のスリットラインには、ラミネート機能が設備されていますので、加工フィルムに保護フィルムをラミネートしながらスリット加工をすることも可能です。
また、古い保護フィルムを剥がして新しい保護フィルムに貼り替えることもできます」、と柏原工場長は語る。このため、MSRでは、スリット機能にラミネート機能を常備した機械を、自社で開発・設計している。 ★品管レベルを高めた新型スリット機
約2年前に原反幅2,500mm対応のスリット機を導入し、ビジネス展開を図っているMSRだが、ここに来て新たなスリット機を導入することになった。これについて柏原工場長は、「更なるクリーン度の維持と、品質管理面での課題から、原反そのもののチェックをも考慮する必要があり、最大原反幅1,900mm対応の、バックライトによる目視検査装置、保護フィルムなどの簡易ラミネート装置および材料のクリーニングシステムを標準搭載したスリッターを自社で一から設計製造しました」と説明し、現在の市場ニーズに対応した新型機への期待を語る。 ★「攻めの品管」と顧客コミュニケーション
材料によっては、1巻数百万円もするものを加工するケースもあり、品質管理は搬入から搬出まで厳しく行われなければならない。柏原第2工場長と第2工場の品質管理責任者である溝端秀穂氏は、「搬入から、お客様と厳密に加工材料について話し合い、加工材料の保存状態、巻き状態、加工条件、場合によっては材質などをすべて把握し、事前に欠陥発生に繋がる要因の有無を徹底的に突き止め、お客様に提言し、お客様に製品加工について正しく理解していただき、判断を下していただいてからスリット加工を行います。こうしたプロセスを経ることで、お客様からの信頼が得られます。最近のお客様は、品質管理についてかなりシビアになっているのも事実で、納品後に、光学顕微鏡などで検査を行い、欠陥を発見すると、どのような状態で起きるのか、その可能性があるのかを問われることも多々あり、以前のように『どうしてでしょう』などと曖昧な返答ができなくなっていることも確かです。そのため、日々攻めの管理体制で加工に臨んでいます」、と強調し、両氏の品質管理に対する熱い思いが伝わってくる。
精密薄膜塗工フィルムの分野での品質管理の主役は、意外なことに目視だが、スリット加工の現場ではどのようなことが行われているのだろうか。「白黒を判別するカメラ検査もありますが、原反全体を通してのグレーゾーンを判断する必要があるため、目視検査を取り入れています。この目視検査データは、お客様にフィードバックし、最終的には、お客様が、自社の加工ラインでのカメラ検査機用のプロファイル等にお使いになっています。目視のため、検査員によって検査基準にバラツキが出ないように、複数名で重複確認しています。また、検査員は少なくとも数カ月のトレーニングを積み重ね、熟練の者を交えて検査に当たり、欠陥プロファイルを構築しています。欠陥を発見した際には、お客様に連絡を入れ、それを確認していただき、それがどの程度のもので、どのような問題になのかを審議していただき、判断を下していただくことになります」(柏原第2工場長)。
材料を切る技術だけではなく、目視する技術を涵養することで、もの作りの感性を磨き上げている姿が窺える。
スリット加工といえば、スリット幅精度やスリット幅の最大最小などがシビアに問われることも多い。この件については、「確かにスリット精度が求められることもありますが、電子材料系に関しては、スリット加工後に更に抜き加工などの後工程が施されることが多いですので、スリット幅精度はプラスであればOKというところもあります。ただし、巻取に関しては、巻取欠陥を作らないためにも、巻圧を正しくコントロールするような配慮が求められます。勿論、当社ではそのような対応を講じています」(柏原第2工場長)。 ★加工内容に応じて分業化推進
スリット加工専門会社として歩んできたMSRだが、もはや単なるスリット加工としての事業ではなく仕上加工会社に脱皮し、今では多様なニーズに対応することで更なるビジネス展開を図っている。その事業内容について、本社事業本部長の杉山晃一氏(写真左)と品質管理部長の稲岡正晃氏(写真右)に話を伺った。
「本社工場は、第2工場とはまた違った加工素材や加工技術を取り扱っています。本社工場は大きく3つの工場部門、N工場、S工場、K工場に分けられ、それぞれ分業した加工を行っています。N工場は、クリーン度クラス10,000の環境下で、面長1,400mmまでの原反を扱っており、機能フィルムを中心に多数の複合材料の加工を行っています。これに対してS工場は、精密スリット加工が主体で、面長は600mmまで、最小スリット幅0.8mm、場合によっては0.4mmまで対応可能です。そしてK工場は、ラミネートやシートカットなど、スリット以外の加工を受け持っています」(稲岡本社品質管理部長)。さまざまな加工ニーズに対し、専門的に対応すべく分業化(カンパニー化)を導入している例だ。
★スリット加工は日々挑戦
「スリット加工にとって材料の厚みムラは永遠のテーマであり、それをどのように上手くスリットし同じ巻圧で巻き取るかは日々の勉強です。材料を作った側からすれば、スリットは切るだけのものと思う方が多いかもしれませんが、切るだけならどの企業でも内製化で十分対応できると思います。しかし、現実にはさまざまなものが当社に持ち込まれています。お客様で、要望通りの品質に切ることができないものを持ち込まれてテストされる訳ですから、お客様の要望する品質に対応できるかどうか、日々挑戦しています」(杉山氏)。 ★特殊なスリット加工と仕上加工
スリット加工も2,000mm超えの広幅の物や、数mmからコンマ数mmまでの細幅加工を含め、材料の表面に付加価値を付与する特殊加工もさまざまな形で行われている。その内容について杉山本社事業部長は、「光学フィルム、ポリイミドフィルムが増加傾向にある中、金属箔については安定した依頼を受けています。フィルムに関しては薄いフィルムになると4.5μmの材料など1桁台の材料が目立つようになりました。そのような薄い材料はシワになりやすく、搬送系には細心の注意が必要です。薄物を切るには刃物の選択も重要です。銅箔の場合にはエッジの波打ちが発生するケースが多く、この発生を防ぐには、接圧、刃物の形状、切った後の
パスライン、刃物に対しての切り角などさまざまな調整を行ったピンポイント設定での加工が求められています」、とスリット加工としての設備や技術を試される依頼も受けつつ、以下のような特殊な材料や加工を扱うことも多いという。
●CCL材料加工
CCL(Copper Clad Laminate)はプリント基板用の材料の1種で、ガラス布などの基材に絶縁樹脂を含浸させ、銅箔を張り合わせて積層したものだ。こうした複合材料のスリット加工について杉山氏は、「金属とフィルム用の刃物の形状が違うため研究・開発が必要とされ、メーカーによって、
また加工条件によって加工難易度は異なります。刃物の選択も重要ですが、特にテンションの安定性が上手くスリットできるかどうかの重要なポイントとなります」、と語る。当事者ならではの、数種類の貼り合わせ材料の難しさを語る一面だ。
●ロールブラスト加工
サンドブラスト加工などでよく知られているが、「材料の表面に粗さを作り、接着力を増加させたり、凸性のある表面を平坦にしたりするための加工を行っています。当社ではサンドではなく独自の方法で表面に粗さを付けています」(杉山氏)。
●ナーリング加工
この加工は一般的に行われている方法だが、「材料の両端に凹凸を付けて、ロールシートの中間に空気を混入して巻き材料同士が擦れ合ってキズを作らないことを目的としています」(杉山氏)。
●プラズマ表面処理
スリット加工は、ある加工の後工程でもあり、次工程の始まりでもある。複合材料の開発や需要が増加するにつれて、基材同士の貼り合わせ強度も重要な課題となる。また、基材そのものの洗浄も重要なこととなる。そこで、「新たな付加価値を持たせたスリット製品として、1,300mmまで対応したプラズマ表面処理の依頼にも対応しています。既に多くの方から問い合わせをいただいており、今後の新たなビジネス展開に期待していいます」(杉山氏)。 ★中国第2工場、2007年4月から中山岩谷会社で稼働
既に2005年1月から中国蘇州にて岩谷産業(株)とMSR(株)の合弁で、蘇州艾思尓(ISR)電子薄膜有限公司が稼働し、順調に業績を伸ばしている。
岩谷産業(株)はマティリアル本部内に新たに電子マティリアル部を立ち上げ、新たな事業展開を図っている。そちらの電子資材課長である三浦氏に第2工業立ち上げについて伺った。
「既に中国の幾つかの地区で携帯電話やゲーム機などに使われるバックライト関連の部品を製造販売しており、それに関する事業展開の一環としてスリット加工事業をMSR(株)の技術を生かして展開しているが、ここに来て更なる需要を見込み、既に中国国内で事業展開をしている中山岩谷会社(Zhongshan Iwatani Co.,Ltd.)の工場内に事業所を構え、MSR(株)さんの技術指導のもと、クリーン度10000内でスリット機2台を導入して2007年4月の稼働に向けて最終的な準備に取り組んでいます。加工材料としては、中山岩谷がある華南地区もバックライト関連の仕事も多く、蘇州ISRとほぼ同じような内容での事業展開となる見込みでおります。従業員は代表を除いて全て現地採用しており、既に蘇州ISRで研修を積んで来年度の創業に備えています」。
★中国でのスリット加工ビジネス展開について
約2年前、蘇州ISR社の立ち上げから、岩谷産業から派遣され総経理として活躍している古沢茂樹氏と、MSRからの技術指導員として現地に派遣されている国際戦略室の山田進一室長に、この2年間での現地ビジネスの動向について伺った。
「蘇州ISRのスリッター加工材料については、岩谷産業の三浦さんも話されていますが、加工数量が伸びているのは携帯電話やゲーム機等の液晶用バックライトに使われる機能性コーティングフィルムです。加工依頼については、当初よりも1ユーザー当たりでご提供するアイテム数が増加して来ています。これは当社を徐々にご信頼いただけていることや、ユーザーさんが、より小ロット・多品種生産に移行していることが反映していると思います。また、上記に合わせて新規開発テーマが増えて来ています。これは岩谷−MSRという協力体制が外部から一定の評価を受け、私どもの機能を使って中国での材料供給をご検討いただけているからこそだと、深く感謝しています」(山田室長:写真右)。中国国内での信用を確実に築き上げているようだ。
−売上の推移は−
「月商ベースで1億円を窺うところまで来ました。これは昨年比で200%程度になります。来年第1四半期に3台目のスリット機の投資を決定しており、2007年度は2006年度から更に倍増を目指します」(古沢氏:写真下)。
−現地オペレーターを採用しているが、オペレーターの仕事意識の変化は−
「直接お客様の前に出るといったことから展示会出展の経験(2005年上海・2006年10月蘇州)で仕事に関しての知識を持つようになり、意識も上がっています。我々が加工している商品がどのような使われ方をするのかを理解して、加工・検査するようになって来ました。私が感じる一番の変化が起きたのは、今年8月に現地スタッフ2名がMSR本社で研修したことです。蘇州ISRに残っている現地スタッフにとっても、日本に行くチャンスがあるということで、大きな意識向上につながっています。研修を終えた2人がISRへ戻り、日本でのことを他のスタッフに話すことで、さらに全体の意識が向上しています」(山田室長)。
−中山の工場に導入されるスリット機は−
「スリット機は1,200mm幅と1,600mm幅。その他に、1,500mm幅有効のラミネート機があります。1,200mmは前後2軸巻取機。両スリッターともMSRが一から設計しました。1,600mmは上下2軸巻取機で、MSRのノウハウを加えた量産機になっています。蘇州ISRとの違いは、PETセパレーターの量の増加を考慮し、上下2軸の量産機を導入した部分と、現在の中国でのスリットに合わせて作られたMSRオリジナルの前後2軸機です」(山田室長)。
−中山工場でのビジネス展開は−
「既に華南(中山)での営業活動はスタートしており、先行して蘇州ISRでの加工品を華南地区へ供給しています。現在は華東地区でお世話になっているユーザーさんの華南工場向けがメインですが、今後、華南地区での営業活動を強化し、華東地区よりもマーケットが大きい華南地区でも一定の存在感が発揮できるようにしていきたいと思います」(古沢氏)。
−中国でのスリット専門加工業者としての成長はまだまだ望めそうか−
「蘇州でのこの2年間の実体験や、中山(華南地域)での岩谷産業の営業報告を聞いていると、まだまだ需要があると思います。しかし、華南のほうでは既にスリット機をお持ちのお客様もいらっしゃることから、『ここでしかスリットができない』という差別化がより必要だと思っています。
試作・開発も蘇州工場の稼動当初と比べ増加していますので、本社と一層連携を強化して中国での『ONLY ONE』を目指していかなければ、と気を引き締めています。また、現在は液晶関連に特化していますが、他のマーケットはほぼ手付かずですので、これからさまざまな分野へチャレンジしていきたいと思います」(古沢氏、山田室長)。
★挑戦せずして生まれるもの無し
今後、ますます増加傾向にある高機能性材料のスリット加工を手掛けるために、更なる品質管理体制が必要と予測される。広幅スリット、細幅スリット、スリット加工精度に注目してきたスリット加工業であったが、ここに来て改めて品質管理を含むウェブ・ハンドリング技術の重要性を垣間見ることができた。北田社長の『No Challenge、No Creation(挑戦せずして生まれるもの無し)』との言葉に込められている、MSRの今後の事業飛躍に期待したい。
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